「――さん・・・さんっ」 「・・・んー・・」 「起きるっス!さん!」 ・・・起きる? そういえば、なんか冷たいところに、寝てるような。 そしてこの声は 「・・・四不象ちゃん?」 うっすらと開けた目に、四不象が映った。 しかし、 「・・・・なんでそんなとこに入ってんの?」 四不象は大きな砂時計に入っている。 砂は絶えず落ち続けていて、このままでは四不象は埋まってしまう。 「入って・・・って、自分で入ったわけじゃないっスよ!気が付いたら入れられてたっス!」 「入れられ・・・?」 そういえば、ここはどこだろう。 見覚えのない部屋。少し派手な感じが印象的だ。 「ボクたち捕まったんスよ・・・」 そう言って四不象は、上半身を起こしたの後ろを指差した。 囚われの身 洒落た椅子に、湯気の立つ紅茶。 机の上にはティーポットと茶菓子が置かれていて、花瓶には綺麗な花が生けてある。 そして優雅にその人は、紅茶をすすっていた。 「やあっ お目覚めのようだねくん!さぁ、一緒にティータイムを楽しまないかい?」 キラキラと光り輝くオーラと豪華な花を背負っている、という感じだ。 どこぞの国の貴族のような彼は、に笑いかけた。 「・・・・。・・・誰?」 全く見覚えがない。 「さん、この人は趙公明さんって言って、ボクたちを捕まえた人っスよ」 四不象がサラリと説明した。 なるほど、つまりは敵か。 しかし今はそれよりも大事なことがある。 「えーと、趙公明、さん?この砂時計から四不象ちゃんを助ける方法って無いですか?」 このままだと四不象ちゃん死んじゃうし。窒息死だわ。それは駄目よ、可愛い四不象ちゃんが死んじゃうなんて! 大きく首を振りながら砂時計を叩き、は言った。 「もちろん方法はあるとも。簡単さ。砂時計は宝貝を使えばすぐに壊せるんだ」 「せーの」 は素早く宝貝を砂時計に向け、すぐに一振りした。 の作り出した幾筋もの小さな風は勢いよく砂時計にぶつかり、砂時計はあっさりと バリンッ 壊れた。 「ふむ・・・防御の宝貝のはずなのに、攻撃系の風を出すなんてね・・・。それよりもキミから宝貝を奪うのを忘れていたよ」 まいったな、と趙公明は笑顔のまま溜息を吐いた。 「よし、じゃあ行こう四不象ちゃん」 「ありがとうっスさん!」 と四不象は思い切り趙公明を無視し、ドアへ向かった。 しかし、 ガチッ 「・・・あら」 開かない。 「まあ待ちたまえよ。キミたちの仲間がここまでくるにはまだ時間がある。 それにそのドアは設計ミスで内側に鍵穴を付けてしまってね。僕が持っているこの鍵を使わなければ開けられないんだ。 さあ!キミたちの席も用意したから、話でもしながら一緒に待とうではないか!」 「「・・・・」」 なにかのミュージカルを一人でやってのけているような雰囲気の趙公明。 と四不象には返す言葉が見つけられなかった。 それに、趙公明の言うことは本当のようだ。 しっかりとドアのこちら側に付いた鍵穴、ドア自体も鉄製のようで、ビクともしない。 仕方なく、と四不象は用意された椅子に座った。 座った2人に手際よく趙公明は紅茶を注ぎ渡した。 「ささ、遠慮はいらないし毒なんかも入ってないからね。くつろいでくれたまえ。僕のお手製ケーキもオススメさ!」 はははは! と、高らかに笑いながら、趙公明は自分のカップに再び紅茶を注いでいた。 は出された紅茶を見、それから趙公明を見た。 「あの、趙公明さん」 「なんだいくん?もしかして紅茶はお気に召さなかったかな。それなら先日仕入れたばかりのジャスミンティーもあるんだが」 言いながら席を立とうとした趙公明を、は制した。 「・・・いや、そうじゃなくて・・・。ちょっと質問が」 「どうしてくんは、四不象くんと違って砂時計に入ってなかったのか、かい?」 ケーキを食べるためのフォークをピッとに向け、趙公明は言った。 少し驚いて、は趙公明を無言のまま見つめた。 その通りだったからだ。 「答えは簡単さ。――僕はね、キミと話がしてみたかった。単純にそれだけだよ」 趙公明は一口紅茶を飲み、また机にカップを置いた。 「ほら、自分の身が危ないときに、悠々と話をする人間なんていないだろう?だからキミの分の砂時計は無かったというわけさ」 「・・・じゃあ四不象ちゃんと私を同じ部屋に入れたのは?私と話がしたいなら、四不象ちゃんは別に捕まえなくても・・・」 「駄目駄目、そんなことじゃ駄目なんだよくん」 の問いに、趙公明は大きく首を左右に振った。 「これはささやかなドラマ演出なのさ! いいかい?まずは最上階に囚われた姫君!くん、キミのことさ。そしてその姫のお供である喋る動物!これは四不象くんのことだよ。 そして最も重要なのは騎士役の彼!そう、太公望くんさ!」 立ち上がった趙公明は何故かくるりとターンを決め、どこからか水晶玉のようなものを取り出し、2人に見せた。 「・・・あ、太公望」 それに映っていたのは太公望。 「それにこの人は太乙さんっス!」 その隣には太乙真人の姿もあった。 「ふむふむ、どうやら太公望くんたちは無事に一階を突破したようだね。太公望くんがここに来るまで・・・あと約2時間ってところかな?」 「・・・ていうか私、『姫君』?」 「ボクは『お供の喋る動物』っス・・・」 友好的ではあるのだが、どこか敵とも思えない雰囲気の趙公明。 少しやりづらい。 「さあさあ遠慮せずにくつろいでくれたまえ!紅茶のお代わりだって、いくらでもあるのだから!」 高笑いをする趙公明に、半ば何かを諦めたような気持ちで、四不象とは大人しく太公望を待つことにした。 戻 前 次 いや、すみません。短くて。 執筆...2004.10,01 |