「天化さんもナタクさんも雷震子さんまで仙人界に帰ってしまって、一気に寂しくなったっスね・・・」


対・魔家四将の日から数日経った。

あの酷い戦いの反動のように、四不象はのんびりと言った。


「そうねぇ・・・でもあの3人は特に酷い怪我だったから仕方ないもの」


四不象の隣でが苦笑した。


「お師匠さまたちも、せっかく戦いが終わったっていうのに忙しそう・・・あ、お師匠さまだっ!」


武吉が、前方を走りながら横切ろうとした太公望に手を振った。


「おお、スープーに武吉。・・・・?」


「よっ 太公望、頑張ってる?」


にこやかには手を振る。


「『頑張ってる』・・・って、おぬしも手伝わぬか!呼び出しがあったであろう!?」


拍子に、太公望の手からいくつかの巻物が落ち、床に転がった。


「え、さんも実は忙しかったんスか?」


四不象が怪訝な顔をしてを見た。

そして、本人は俯き、


「・・・・ちっ」


「舌打ちをするでない」


「・・・・はい」


そして静かに溜息を吐きながら、床に落ちている巻物を拾い上げた。


「ご主人たち、何だか忙しそうっスけど一体何をやってるっスか?」


四不象が尋ねた。


「これから要塞造らなきゃなんないのよ」


「「要塞?」」


四不象と武吉の声が揃う。


「先日の魔家四将との戦いでも分かる通り、わしらがこの都市におると一般の民にも迷惑がかかるでのう。
 だから殷と周の国境に要塞を造り、わしらはそこに住むのだ。そうすれば殷の仙人が攻めてきてもそこで抑えられるからのう。
 既に現場に楊ゼンを向かわせて指揮をしてもらっておるよ」


「・・・え、要塞造りの指揮者って楊ゼンさんなわけ?」


が、急に真顔になって尋ねた。

しかし太公望が答えるまもなく、急に武吉が何かに気付いたらしく後ろを振り向いた。


「どうした、武吉?」


「誰かこちらを見ています!」


武吉は、建物の端を指差した。

確かにそこには人影。明らかにおかしい人影があった。

こちらを覗いている様子で、しかし何とも分かりやすい。


「!・・・あれは・・・」


ハッと、が何かに気付いたように声を出す。


「何だ、おぬしの知り合いか?」


「いや、顔が見えないから分かんない。ていうかたぶん知らない」


「紛らわしい言葉を出すな!」


と、覗いていたその人物が、こちらが見ているということに気付いたらしい、何かを投げてきた。

丸い石のようなものが飛んでくる。


そして


ドゴッ!


太公望の額に真正面から当たった。


「ご、ご主人!?」


額に何かが当たった太公望は、そのまま倒れた。


「うわ!太公望、弱っ! あっ敵が逃げるわ!」


太公望とその人物を交互に見たが、逃げていくその人を見て叫んだ。


「任せて下さいさん!逃がさないぞっ!」


まるで鉄砲玉のような勢いで武吉は追いかけていった。








「え、逃げられたの?武吉くんが?」


武吉が戻ってきてそう報告したのは、追いかけていった数分後のことだった。

太公望は倒れたすぐ後に無事起きあがった。


「申し訳ありません・・・匂いをかぎながら追跡したのですが、どうやら犯人は川に入って逃走した模様で・・・」


「――まぁ仕方あるまい。犯人はおそらく道士だ」


廊下の手すりに腰掛けていた太公望が言った。


「「道士!?」」


またも見事に四不象と武吉の声が揃った。


「あやつの投げた石・・・あれはおそらく宝貝だ。いかにわしでも普通の石なら避けられるわい」


「・・・・・えぇー?・・・そう?」


があからさまに疑いの眼で太公望を見る。


「・・・失礼だな、おぬし・・・」


「敵っスかね、ご主人!」


四不象が意気込んで聞いた。


「分からぬ・・・。だが、敵か味方かいずれにしても正体をつきとめるねば!おぬしらはあやつの調査をしてくれぬか?」


「はいっ!」


「了解っス!!」


四不象と武吉が、それぞれ同意して答える。


「じゃあ私は夜の見回りは私も一緒にさせてもらおうかなぁ、夜は背中に乗せてくれない?四不象ちゃん」


は両手を合わせて四不象に頼む。


「もちろんっス!」


嬉しそうに四不象は言った。


「なんだ、珍しいな。てっきりも今からその調査の手伝いをする、などと言うかと思ったのだが」


予想外のの言葉に、太公望は笑った。


「だって要塞造りの指揮してるのって・・・楊ゼンさんなんでしょ?」


が伏し目がちに言う。


「そうだが・・・楊ゼンが、どうかしたのか?」


太公望は首を傾げる。


「・・・だって、」


は一旦そこで区切り、小さく溜息を吐いた。


「あの人、私がサボってるの見つけたらすっごい怒るんだもん!怖いったらありゃしないの!
 あ、太公望!さっき私が四不象ちゃんたちとサボっ・・・じゃない、『長めの休憩』取ってたこと楊ゼンさんには絶対言わないでよ!」


そこまで言い終わって、は『言い切った』というような表情で息をはいた。


そして太公望は、何故か一気に体の力が抜けるような気がした。


























新しい仲間


























「うーん、綺麗な満月・・・ほら見て見て四不象ちゃん」


さん・・・犯人捜しなんスから、空見てちゃ見つからないっスよ・・・」


夜、四不象とは、昼間言ったとおり一緒に行動していた。

は四不象に乗り、2人で空からの見回りをしていた。

武吉は地の方で見回っている。

四不象と武吉は、昼のあの後、ちゃんと辺りを探したのだが犯人は見つからなかったのだ。


「いないっスねぇ・・・あの昼間の人、見あたらないっス・・・」


「諦めるのは早いわよ、四不象ちゃん。犯人は必ず現場に戻ってくるのだから!」


得意気には言った。


「何かサスペンスみたいなセリフっスね・・・・あれ?ご主人がいるっスよ」


ちょうど四不象との真下辺りに、太公望の姿が見えた。

そこは、西岐城の倉庫があるとことだ。

こんな夜になんの用事があるというのだろう。


「・・・ご主人、何をキョロキョロしてるっスかねぇ・・・・。
 あぁっ!さん!ご主人があの手に持ってるのはモモっス!こんな夜中につまみ食いを・・・!!」


決定的瞬間を目撃した。


「・・・うーわぁ、・・・・なんて軍師よ、もう・・・アホね、アホとしか言いようがないわね」


は呆れ、溜息を吐いた


「そういえば周公旦さんが『倉庫のモモの減りが早い』とぼやいてたっスけど、犯人はご主人だったっスか!
 けしからんっス!即刻現行犯逮捕っスよ、さん!」


「待って、誰かいる!」


は四不象を制して、下を指差した。


「太公望はけしからん事にー、庶民の税金であるモモをー」


が指差したその人物は、何か独り言を言いながら書き込んでいる。


「「犯人!!」」


と四不象は大声を出した。


「はっ!?し、しまった!!」


犯人は、見つかったことに気付いたようだ、昼間太公望にぶつけた武器を、今度は四不象めがけて投げつけた。


「こんな石かわすのよ、四不象ちゃん!」


「了解っス!」


のかけ声に、四不象は素早く石を避けた。


が、


ガン!


見事に四不象の額に当たった。


「うっそ、何で!?四不象ちゃんっ!」


の声も空しく、四不象の体は地面へと引っ張られていく。

ちょうど、犯人の真上から地面へと。


「・・・・あ、しまったぁ!!」


四不象とは、犯人の上に落ちた。


「!! 誰だおぬしは!?」


気付くのが遅い太公望。


「あっ!四不象すごい!さんも!大丈夫ですか!?」


物音を聞いて、武吉が駆け付けてきた。


「・・・な、なんとか・・・」


は四不象から降りた。


「フッ・・・フフフ・・・こうなったら仕方ないわね・・・」


その人は、四不象の下から抜け出して立ち上がった。


「あたしはスパイ!聞太子の命令により周の情報を集める、その名もケ蝉玉という美少女よっ!!」


自信満々といった強気の笑顔を見せ、スパイだと名乗ったその人は言った。


「ずいぶんとペラペラよく喋るスパイだのう・・・」


「あれーっ 何でこんなところにモモが落ちてるんだろう?」


武吉は、『何故か』地面に転がっているモモを拾った。


「・・・スパイ・・・」


は、まじまじとそのスパイを見つめた。


「・・・・可愛い!可愛いわっ!まさか犯人が可愛い女の子だったなんて!
 スパイさん!えーと、蝉玉ちゃんだっけ?初めまして!私はっていうの、よろしく!」


の目は輝いていた。

背景には花が飛んでいそうだ。


「あ、あらそう?ありがとう!えっと、ちゃん?あたしの方こそ宜しくねっ」


2人は笑顔で握手を交わした。

お互いの立場を分かっているのだろうか、二人して笑顔を向け合っている。


「ちょっ・・・さん!相手はスパイですよ!敵ですよ!お師匠さま、ここは僕が・・・」


「待て、武吉」


武吉を太公望を制した。


「ここはわしがやる。スパイよ、打神鞭のサビにしてくれようぞ! そこから退くのだ、!」


打神鞭を蝉玉に向ける。

やけに強気だ。


「え、太公望、なによ蝉玉ちゃんと戦うの?蝉玉ちゃんは悪い子じゃないわよ!」


「・・・えらく自信満々だのう。根拠は?」


「・・・・勘?」


は蝉玉の前に立ちはだかり、太公望と向き合う。

だが、言動内容は曖昧。


「良いのよちゃん、あたしはスパイ!敵と出会ったら戦うのが当然なんだから!」


蝉玉はの前に出て、宝貝を持った。


「フフ・・・この宝貝『五光石』の恐ろしさも知らずにおめでたい事ね!周の軍師・太公望!
 くらえ!ドリームボール3号!!」


『五光石』を、蝉玉は勢いよく太公望に向けて投げた。


「くらうか!」


太公望は姿勢を低くして五光石を避ける。


と、五光石の軌道が急に変わり、避けた太公望に向かってきた。

間一髪、太公望は軌道を変えて向かってきた五光石を避ける。

だが、


「甘いわっ!」


蝉玉が言うと、五光石は再び軌道を変えて、ついに太公望の頭に当たった。

いい音がした。


「フッ・・・この宝貝はどんなの避けても必ず当たるのよ!
 そしてそれより何より恐ろしいのは・・・当たった人が必ずくどくて濃い顔になるって所よっ!」


蝉玉は五光石を上に掲げて宣言した。


「・・・なんというアホな宝貝・・・」


太公望は脱力する。


「アホとは何よアホとは!」


蝉玉は五光石を投げる格好をし、次の攻撃態勢にうつった。


その時、



「・・・相変わらずだねぇ、太公望さん」


「む?」


突如、背後から人の気配。


「崇黒虎!?」


北伯の崇黒虎だった。

以前に太公望たちが北を味方につけるために向かった場所、北伯候の地の道士で北伯候の弟だ。

霊獣『神鷹』という鳥の主人であり、いつも腕に乗せていて実戦のときには神鷹で戦う。


びくっ


蝉玉の体が揺れた。


「なっ・・・仲間が来たようねっ!いかにあたしといえどもこれじゃあ勝てないわっ!」


蝉玉は宝貝を収めた。


「おぼえてらっしゃい太公望!じゃあまたねっちゃん!」


そして、猛スピードで蝉玉は走り去っていった。


「あ、うん、またね!」


は小さくなった蝉玉の背中に向かって手を振った。


「・・・フムフム」


同様、蝉玉の後ろ姿を見て太公望は、にやけながら腕組みをして何かひらめいたようだった。



「崇黒虎さん、こんばんわ。どうしたんですか、こんな時間に豊邑で?」


崇黒虎に一礼し、は尋ねる。

そして崇黒虎の腕の上にいる神鷹の頭を撫でる。


「なぜって・・・準備が出来たのさ。東西南北四方から朝歌を攻める大規模な包囲作戦の準備さ。
 東・南・北の準備も完了した!これですぐにでも攻めていけるね!」


「そうか・・・」


太公望の表情が安堵のものに変わった。


「でも南と東には仙人・道士が1人もいない。だから元始天尊さまに言って人材を補充する。
 殷の仙人に対抗するにはやはり仙人の力が必要だからね」


「うむ」


太公望は頷いた。




そして、数時間後の夜明けに、崇黒虎と神鷹は北に帰っていった。


「ふぅ・・・あいつは帰ったようね・・・」


豊邑城の城壁の上から、崇黒虎と神鷹の姿を確認して、蝉玉は一息ついた。



「あの・・・スパイさん・・・」


「きゃああ!やる気っ!?」


蝉玉の背後に、いつからなのか四不象が浮かんでいた。


「違うっス。ご主人からの果たし状っス」


「・・・果たし状?」


蝉玉は、四不象が手に持っている手紙を受け取る。


文面はこうだった。


――果たし状  スパイよ。いよいよわしと雌雄を決するときが来たようだのう。
        明日、正午 豊邑城中央広場にて待つ。
        おぬしが勝ったら自由にスパイ活動してよし。わしが勝ったらすみやかに去るのだ!――


蝉玉は静かに手紙を閉じた。


「フフフフ・・・はーっははは!しょうがないわね!挑戦を受けるのもスパイの宿命ってとこかしら!?」


城壁に片足を乗せ、蝉玉は得意満面で高笑いをした。

よく響く声だった。










翌日、ついに太公望と蝉玉のスパイ活動をかけての決戦の日がやって来た。

豊邑城の中央広場、そこには沢山の周の人間が詰め掛けてきている。

スパイであるというのに、蝉玉を応援している男性陣もいた。

もちろん武成王や天祥、武成王の義兄弟たち、南宮逅などのお馴染みメンバーも揃っている。


「・・・な、なんなの、このギャラリーは?」


周の人間全員が集まってきたような、あまりの人の多さに蝉玉は絶句した。


「スパイさん、すまないっス・・・。周の人たちはお祭り好きだから、こういう事があるとどこからか嗅ぎつけてくるっス・・・」


「・・・まぁ良いわ。
 逆にこれはあたしのスパイとしての実力を皆に知らしめる絶好のチャンスで・・・」


蝉玉が拳を作って気合いをいれた、ちょうどその時


「プリンちゃーんっ!!」


「きゃあああ!?」


「姫発やめんかー!!」


蝉玉の姿を見つけた姫発が後ろから蝉玉に抱きつき、それを丁度見たが姫発に跳び蹴りをくらわせた。


「・・・ぐ、げほっ・・・さ、さすがちゃん・・・」


よろめきながら、姫発は横腹をさする。

ダメージは大きかったようだ。


「まったく、見境ないんだから」


「あっ もしかしてヤキモチ?ヤキモチ?大丈夫だってちゃん!俺ってけっこう一途な男だから!」


苦痛に歪んでいた顔が、たちまち笑顔になる。


「・・・あぁもう、一生勘違いしてなさい」


否定するのも面倒くさい、といった風では溜息を吐いた。


「ところで、これ何の騒ぎ?蝉玉ちゃんもこんな公衆の前に出てきてて良いの?スパイじゃない」


「・・・え?さん、知らないんスか?」


「何が?」


「今からご主人とスパイさんが戦うっスよ。ご主人はなんか準備があるとか言って、まだ来てないっスが・・・」


四不象から聞いて、はハッと何かに気付いたように頬に手を当てた。


「・・・まさか・・・昨日作ってたあの変なぬいぐるみみたいなのは・・・このために・・・!?
 そうか、私に言ったら気付くから言わなかったんだわ!」


独り言のように良いながら、は次々と1人で考えをまとめていった。


「どうしたのちゃん」


蝉玉は首を傾げる。


「駄目よ蝉玉ちゃん!太公望はかなり陰険で卑劣なことを考えてるわ!早くこんな戦い撤回して・・・」


「待たせたのうスパイ!」


の願いは届かなかった。

の背後から、大きくて変な物体が近付いてくる。


そして、は恐る恐る後ろを振り向き、蝉玉もそれを見た。


「さぁ決闘だ!!」


ペンギンのような、大きなかぶりものをかぶった太公望が、そこにいた。


「いっ・・・いやあああっ!!」


蝉玉は目の前にいる、その大きなペンギンをかぶった太公望を見て絶叫した。


「・・・ご主人、ついにかぶりものを・・・」


「フフフ・・・スープー驚いたであろう?」


「驚いたというよりもあきれ・・・」


四不象は明らかに見てはいけない何かを見てしまった、そんな表情で太公望をみつめる。


「このスパイは鳥が苦手なのだ!昨日、神鷹を見て取り乱しておったのを、わしは見逃さなかった!」


太公望は、手、もとい翼を蝉玉に向けて言った。


「太公望!あんた何してんのよ!そんなかぶりものして・・・不審者・・・じゃない、人の弱みにつけ込むなんて最低よ!」


は太公望、もといペンギンを指差して言う。


「退くのだ。これはもはや避けられる戦い・・・これが終わらねば明日は来ぬ!」


言いながら太公望は勢いよく翼を広げた。


「・・・いや、何言って・・・」


の言葉には聞く耳を寄せず、そして太公望は宙に浮いた。


「はーっはっはっは!!」


「いやあああ!!」


蝉玉は叫びながら、空を飛んで追いかけてくる太公望から必死で逃げた。


「とっ・・・飛んでる!?ご主人が飛んでるっスよ!?」


「・・・・打神鞭を翼の中に仕込んでんのよ・・・。昨日何か必死に作ってると思ったら・・・」


「どうするっスか?さん・・・」


「・・・・・どうしよう。・・・ていうか・・・あんな兄弟子、嫌・・・」


は呟いた。

もはや止める気もおこらない。

なんともあほらしい戦いが目の前で繰り広げられているのだ。


そんな中、蝉玉は本当に必死に走っていた。


「ああっ!行き止まり・・・!!嫌・・・嫌・・・!!」


泣きそうになりながら、必死に逃げていたのだ。

しかし目の前には壁。


「フッフッフ・・・どうやらここまでのようだな。覚悟せい、スパイよ!」


太公望は蝉玉に近付く。


ブチッ


「寄るな このボケェ!!」


急に蝉玉が目を見開いたかと思うと、次の瞬間左手が炸裂した。

蝉玉の左手は太公望、ペンギンに真正面から当たった。

会心の一撃だった。


一瞬、広場は静まりかえる。


そして、


「勝者スパイケ蝉玉!!」


誰か司会者でもいたのだろうか、大きな声が響き渡り、その声を合図にして広場は一気に歓声に包まれる。


ペンギンのかぶりものをかぶった太公望は地面に倒れ、蝉玉は地面に座り込み肩で息をしていた。


「か・・・勝った・・・」


蝉玉は倒れた太公望を横目で見、そしてゆっくりと笑顔になった。

太公望は、かぶりもののせいで表情は見えない。


「女の人はいざって時に強いっス・・・」


「蝉玉ちゃん、大丈夫?」


太公望に対する呆れ半分、は蝉玉に駆け寄る。

倒れている太公望には脇目も触れずに。


「あ・・・うん、大丈夫・・・」


えへへ、と笑いながら、蝉玉は立ち上がった。



こうして、蝉玉は周の公認スパイとなった。




































      




































痴話げんかです。(待て


初執筆...2004,01,23
改稿...2005,03,14