天候は晴れ。

澄み渡る青空が、まぶしく見えた。


ずっと見ていても飽きることのないその青空が、突如何かで遮られた。

同時に降ってくる声。



「・・・こんなところにおったのか」



西岐城の屋根の上。

日当たりも風当たりも良い絶好の場所を、は見つけていた。



「太公望。どうしたの?」



は上半身だけ起こした。

何か用事?

そう尋ねる。



「急に姿が見えなくなったら探すのは当たりまえであろう」



の顔を上から覗き込む格好をしていた太公望は、その顔から目を外すと、隣に腰掛けた。


「あ、そうなんだ。ごめんなさい」


は笑う。

そんな様子に、太公望は小さくため息をついた。


「・・・もうすぐ戦争が始まるのう」


ぽつりと、太公望は呟いた。

もちろんそれは、の耳にも届く。


「・・・そうだねぇ」


も、呟くように言って返した。


、・・・おぬしは、大丈夫か?」


ゆっくりと聞いた。

少し躊躇うように。


「・・・なにが?」


は首を傾げた。

太公望の視線とぶつかる。


「これから戦争が始まるのだ。大丈夫なのか?」


の顔から笑顔が消える。


彼女の事情を知っての、この問い。

子どもの時に両親を殺される場面を見た彼女への。


は太公望から目を離す。


正面を見つめ、そして、再び笑顔になった。


「大丈夫。そういうことは承知の上よ。ちゃんと考えて、太公望のサポートって役割に付いたんだから。
 足手まといにならない程度に、頑張らせていただく予定です」


最後は太公望の方を見、笑顔のまま、言った。

一時、太公望は驚いたようにを見つめたが、


「・・・そうか。では、頑張ってもらうとするかのう」


つられて笑顔になった。
























晴天の彼方






















「うむ、兵士の訓練も大分サマになってきたのう」


「お師匠様、お帰りなさい!あ、さん見つけたんですね!お帰りなさいさん!」


さん、どこに居たんスか?」


「屋根の上に」


は笑顔で答える。


「屋根・・・?」


何でそんなところに。

口には出さなかったが、四不象はそう言いたそうだった。



西岐城の一角、西岐の兵士たちは来る戦争に向けての訓練を積んでいた。

それまでの平和ボケを感じさせないくらい、兵士たちは上達していた。


「これで何とか朝歌軍ともわたりあえるやものう」


腕を組み、太公望は言う。


「・・・・あれ?お師匠さま、空から何か来ます!」


その時、武吉が空の異変に気付き、見上げた。

天然道士は五感も超人的なのだ。

太公望、、四不象も耳を澄ます。

規則的な機械音が、だんだんと近付いてきている。


「む?・・・あれは・・・」


その「何か」は、肉眼でもはっきりと確認できる位置まで近付いてきた。


と、





ド ォ ン !!





「なーっ!?」


着陸した。


「なっ・・・なっ・・・何いきなり・・・!」


危うく下敷きになりそうになったは間一髪身をかわした。

太公望と四不象もそうだった。

ただ一人武吉だけは逃げようともせず、着陸してきたそれを興味津々で見上げた。

兵士たちも、どよどよと顔を見合わせては動揺している。


「うわーーっ!何ですかあれは!?」


「あ、あれは元始天尊さまの宝貝ロボ『黄巾力士』だ!」


太公望が言った。

確かにそれは、太公望、に見覚えがある、原始天尊の宝貝ロボで。


『太公望、に伝令。武成王がピンチ!すぐ朝歌に迎え!』


「黄巾力士」の中から、機械を通しての元始天尊の声が聞こえた。


「何?」


「どういう事ですか、元始天尊さま?」


『武成王の奥方である賈氏と、妹君の黄氏2人が紂王に殺されたのだ。武西王は一族を連れて西岐に向かっておる!しかし妲己、聞仲の差し向けた追っ手が必ずおるだろう!
 おぬしらは急いで武成王を助けるのだ!』


「武成王が・・・?」


「奥さんと妹が殺された?」


そんな、と呟く。

武成王と顔見知りである太公望、は狼狽えた。

あの武成王が、西岐に向かっている。


そして「聞仲」とは、殷に昔から仕えている太師のことだ。

と同時に、崑崙山とは別の仙人界「金鰲島」という場所で仙学を学んだ道士でもあった。

会ったことはないが、名前だけは知っている。

仙人界でも非常に有名な仙人だ。



「姫昌、わしたちは武成王の助っ人に行って来ようと思う」


騒ぎを聞きつけ、城内から出てきた姫昌に、太公望は早速ことの次第を告げた。


「はい、私からもお願いします。私は以前、武成王には大変世話になっています」


「うむ。、スープーよ、早速行くぞ!」


太公望、は急いで四不象に乗った。


「あー!待って下さいお師匠様たち!ぼくも連れてって下さい!走ってついていきますから!!」


武吉は行く気満々、準備運動をしていた。


「・・・・人を轢かぬよう心して走れよ!」


「はいっ!!」


太公望、、四不象、武吉は多くの兵士と姫昌の見守る中、西岐城の門を出た。







「武成王さん、大丈夫かなぁ・・・」


「うむ、間に合うと良いのだが・・・」


沢山の風を切りながら、四不象はハイスピードで空を飛んでいた。

その四不象に付いてきている武吉も凄い。


「武成王さんの奥さんと妹さんが・・・殺されるなんて・・・・」


の呟きは、風の中に消えていった。


「ご主人!前方に変な光が!」


「あれは・・・魂魄だな、誰かが封神されたのだ」


遠い前方で、急に何かが光ったかと思うと、すぐに1つの光の筋になり、空へと飛んでいくのが見えた。


「うわーー!天変地異ですお師匠様!!でも安心して下さい!お師匠様とさんはぼくがお守りしますから!!」


武吉は封神を見たことがないのだ。


「武吉くん・・・あれは誰かの魂魄が封神台に飛ばされたのよ」


「とにかく急ぐぞ!無いとは思うが今のが武成王だったりしたらシャレにならん!」


「超特急っス!!」


四不象はさらにスピードを上げ、武吉もそれに続く。

魂魄が飛んだ場所を目指した。

封神されるような魂魄を持つ人間は、そうごろごろいるわけではない。

限られてくる。

仙道か、封神計画に近い人間か、人並み以上の力を持つ人間。

今の魂魄が武成王ではないと断言することは出来ない。


魂魄が飛んだそこに、人影が見えた。

結構な数の、団体のようだ。


その中に、見つけた。


「あ、いたよ武成王さん!」


「うむ、封神されたのは違う者だったようだのう」


「良かったっス!」


武成王たちがいるその場所は臨潼関だった。

四不象は下降し、武成王たちのいるそこへと降り立った。


「・・・おお!太公望どのに、どのじゃねぇか!」


地上に降りた2人を見、武成王は嬉しそうに笑った。

大きな声と、笑顔。

自然と人を嬉しくさせるような。


「本当に久しぶりだ。変わらねぇな、おめぇらは」


「おぬしは色々あったようだのう」


太公望が気遣い気に言う。

武成王は曖昧に笑っただけだった。


「おおっ あんたらが噂の太公望師叔とさんか!」


武成王の後ろから、顔を出した人物が居た。


「・・・えーと、どちら様?」


はその人を見、太公望の方も見た。


「俺っちは天化っちゅーんだ」


「おお、あの十二仙の一人『清虚道徳真君』の弟子か」


言った太公望に「そのとおりさ」と天化は頷いた。


「俺っちも崑崙であんたらの話は聞いている。いっちょ力になるぜ」


「うむ!」


太公望が頷いた。


「武成王さん・・・妲己の手下はやっつけたみたいだけど・・・」


聞けば、先ほど飛んだ魂魄は妲己の手下だった、ということらしい。

駆けつけた天化が封神したのだという。


それを聞いたは、きょろきょろと周りを見渡しながら言って、すぐに太公望の方を見た。

太公望はの意図を掴む。

というよりも、太公望の方も考えていたのだ。


「そうだ。今度は聞仲が追っ手を出してこよう」


「聞仲!?」


武成王の家族たちが驚きの声を上げた。

武成王は無言で頷いた。

薄々感づいていた、と。

そう言って。


「急がねば、どしどし追っ手が来る。そうなっては厄介だ。急いでこの臨潼関を抜けるのだ」


「・・・・げ、太公望・・・もう遅かったかもしれない」


そこにいた者全員がの指差した関の入り口を一斉に見た。





「お待ちしておりました」


「武成王の御一族」





その入り口を何があっても通す気はない、とでも言う風に、2人の人間が立っていた。


「言った矢先にこれか!」


「来るの早すぎよ!どうすんのよ!」


太公望、が口々に叫んだ。

道士がそんな弱気でどうするのだろう。



「私は張桂芳」


「私は風林」



太公望達を無視するかのように、2人は名前を告げると、



「聞仲さまの命により、ここで足止めさせていただく」



そう言って、個々の宝貝と見られるものを構えた。


張桂芳と名乗った右側の男性は、メガホンのような物を持っており、

風林と名乗った左側の男性は、沢山の丸い玉の連なった、数珠が大きくなったような物を持っていた。



「聞仲配下の金鰲の道士か・・・」


太公望が自分の宝貝を構えながら言った。


「ご主人、あの人たちの持ってるものは宝貝っスかね?変な形っスが・・・」


「金鰲とは流派が違うゆえ、よく分からぬが・・・」



「武成王、あなたが朝歌を裏切ったなんて信じられません。他の誰が裏切っても、あなたと聞仲さまだけは最後まで残ると思っておりましたから・・・」



張桂芳が言った。


「武成王さん、あの人達って知り合いなの?」


が聞いた。


「・・・ああ、やつらは青竜関の総兵士とその部下だ。殷にはあいつらのように聞仲を慕い、聞仲のために働く道士が山ほどいる。中でもあの2人は有名だが、どんな奴らなのかまでは聞いちゃいねぇな。
 そんな奴らを出してくるとは・・・本気で俺を殺すつもりか・・・聞仲らしいぜ」


は黙って武成王を見た。

殷にいる仙人は、なにも妲己の手下だけではない、ということだ。


「うーむ・・・あの2人の宝貝については分からぬか・・・。では一つ、わしが先鋒となって様子を見よう。この打神鞭も活躍を望んでおる」


一同の前に太公望は出る。

そして、その二人の方へと躊躇いもなく歩き出した。


その太公望を確認すると、張桂芳がメガホンのような宝貝を口元に当てた。

すう、と息を吸い、



「太公望よ、動くなっ!!」



大声が響いた。


「いっ!?」


同時に、太公望の動きが見事に止まる。


「・・・なんだ?師叔が止まっちまったぞ?」


天化は首を傾げた。

何だ、今のは、と。


「かっ・・・体が動かぬぞ」





「風林!」


張桂芳が呼んだ。


「疾ッ!!」


呼ばれた風林は、大きな丸玉の一つを完全に停止している太公望に投げた。


「な、何あれ!?」


それまでは手のひらサイズだった丸玉が、風林の手を離れた瞬間、人一人が入れるくらいに巨大化した。

巨大化した丸玉は、太公望目がけて飛んできた。




ばくっ




「食べられたーー!!お師匠様ーーっ!!」


目の前の出来事に、武吉は叫んだ。


「ご主人が食べられたっスよ!何なんスかあれは!?」


太公望が丸玉の中に入ると、丸玉はどんどん小さくなり、それと同時に風林の手元へと戻っていった。



「・・・あの張桂芳とかいう人の宝貝は、音波を使って名前を呼ばれた本人の運動野を刺激して動かなくさせる・・・のかな。変な形だけど」


「それよりさん!ご主人が捕まってしまったっスよ!どうするっスか!」


「うーん・・・あんな宝貝使ってくるんだから、あの人達は今すぐに私たちを殺すつもりじゃないはずだよ。だからそこまで焦らなくても大丈夫だとは思うんだけど、でも太公望が捕まってちゃ元も子もないわね。
 よーし、行け、四不象ちゃん!太公望を助けるのよ!」


「ラジャーっス!!」


は元気よく張桂芳と風林の方を指差して、四不象に言った。

四不象も元気よく2人の方へと飛んでいった。

さりげなく四不象を使っているとも見える

しかし誰も止めようとする人物はいなかった。


「四不象!!動くなっ!!」


「はぐあっ!!」


四不象はぴたりと止まる。

そして太公望のときと同様、丸玉に食べられ、風林の手元へといく。


どうしよう。


「このままじゃみんな捕まってしまいます。みんなしてあの変な宝貝の餌食になってしまいます!」





「何か手はないのか!?どの!」


「耳を塞ぐ強力な何かでもあれば太刀打ちできるのですが・・・耳栓とか」


「・・・・・持ってないな」


武成王とは頷いた。



「黄飛虎・天禄・天男爵・天祥・飛豹・天化・黄滾・周紀・黄明・呉謙・竜環よっ!!動くなっ!!」



張桂芳は事前にメモを取っておいたらしい。

何やら紙を見ながら次々に叫んだ。

武成王一族全員の名前だ。


「いやだーーっ こんなやられ方いやだーーっ!」


武成王の一族は、巨大化した丸玉に飲み込まれ、風林の手元へと収まった。



「あ、私の名前って知られてないみたい!よし、じゃあ」


すっかり人の居なくなったそこに、と武吉だけはしっかりと残っていた。


「あぁ忘れるところだったな。あの娘はたしか太公望の妹弟子の・・・。!動くなっ!!」


張桂芳はに向かってメガホンを向けた。


「やっぱり!?」


の動きが止まる。


「疾ッ!」


風林の投げた丸玉が、どんどんに迫ってくる。


さんっ!」


気付いた武吉がに向かって走る。

だが丸玉の方が、に到着するスピードが速いようだ。


思わず目を瞑った。


嫌だ、どうしよう。






パシンッ






の周りで、何かが弾けたような音がした。


「・・・え」


恐る恐る目を開けると、今の今まで目の前にあった丸玉は、なぜか押し戻されたように張桂芳のところへと戻っていた。

しかも大きさも元の小さな丸玉に戻っている。


「――そうか!の羽衣宝貝は打神鞭と同様、風を操るものであったな!風であの丸玉を押し返したのだ!」


太公望が丸玉の中から叫んだ。

しかし丸玉の中に入っている太公望の声は、体も小さくなっているせいか、どうにもには聞こえなかった。

が、自分自身で答えに気付く。


「・・・太公望や天化くんの宝貝と違って、私のは意志で発動するものだからか・・・。動けなくても使える・・・。・・・た、助かった・・・・」


太公望の打神鞭は振らなければ作り出した風を相手に向けることは出来ない。


「うっわぁ!すごいです、さん!感動です!!」


武吉が感激の声を上げた。


「武吉くん!危ない!」


武吉の後ろからは、新しい丸玉が迫っていた。


「うわー!うわー!これが仙人流の戦いなんですね!感動です!!」


丸玉よりも速いスピードで逃げながら、武吉は初めての戦闘で喜んでいる。


「・・・・武吉くん・・・速い!」


武吉はの正面をものすごい速さで逃げていた。


「何だ!?あの足の速さは!?」


「大丈夫です。この『紅珠』はいくつもあるのですから・・・。挟み撃ちなら逃げられないでしょう!」


丸玉の名前は紅珠と言うらしい。

風林は今武吉を追いかけている方とは別にもう一つ紅珠を投げた。


「武吉くん!!」


が叫んだ。

動けないから、どうにも出来ない。




ザ ン ッ




何かを貫き、それと同時に切る音がした。

風林の紅珠が真っ二つになった。

その向こうにいたのは、


「へへっ。俺っちを忘れてもらっちゃ困るさ」


「天化さん!?」


「天化くん!あれ?だってさっき名前呼ばれてたでしょ!?」


「これさ。さっき師叔が貸してくれたさ」


天化は耳から抜いたそれを2人に見せた。


「あ、これって太公望の超強力耳栓だ。修業時代に居眠りするために使ってたヤツ」


「これのおかげであのメガホンの声も聞こえなかったのさ。・・・だがよ、これはまずいべ・・・あんだけ人質とられちゃこっちから手を出せねぇさ」


「その前に私は動けないしね」


「あの2人はお師匠様たちを人質にして何するつもりなんでしょう?」


「・・・・西岐を攻撃するつもりかもしれない。西岐は今やこの国で一番の豊かな国だし力も持ってる。だから殷にとっては一番邪魔な存在なはず。武西王を人質に、西岐を滅ぼすつもりかもしれないわ」


張桂芳、風林を真正面から見ながら、は天化を武吉に言った。

というより動けないのだから、ずっと見ていなければならないが。


「――そんなことされたら・・・これから西岐に住むつもりの親父達はちょっと困るさ。それだけは止めないとやばいな」


その時







ド オ ォ ン ッ !!







「・・・・・・・・・・崩れた」


関所の一部が、なぜか爆発し崩れた。


「「何っ!?」」


張桂芳と風林が同時に上を見上げ、言った。





「ぜんぶ破壊する」





「あれは・・・・・。・・・誰さ?」


突如上空に現れた人物を見て、天化が言った。


「何なの?誰なの?見れないっ!」


あいにく、その人物はたちよりも後方にいる。

固まって、真正面しか見えないからは、それが誰なのか分からなかった。

というか見れなかった。



「あれは・・・ナタク!?」


丸玉の中から太公望が、その人物の名前を呼ぶのが聞こえた。

天化やには、小さな声としてしか聞こえなかったが。


「え・・・ナタク?ナタクが来てるの?」


「だからそれ誰さ」


「私もよく知らない」


「・・・・・」



「ナタク・・・。そうか、あの少年はナタクというのか。凄まじい破壊力の持ち主だ。だが名前さえ分かればこちらのものよ!
 ナタク!!動くな!!」


が、当のナタクからは何の反応もなかった。


「・・・? 何の遊びだ?」


ナタクは一言、さらりと言った。


「なにっ!?」



同時に、天化、、武吉の横を光線が突き抜けていった。

凄まじいスピードで。



「うわっ 何!?何かビームみたいなものが!」


後ろから前へと突然飛んでいった攻撃に、が驚き、言った。


「あのナタクとかいう人が撃ったさ」


ナタクが撃った攻撃は、張桂芳の持っていたメガホン宝貝に当たり、砕ける音をたててそれは壊れた。


「あっ 動ける!」


自由になった体を動かし、は後ろを振り返った。

メガホンが壊されたため、術も解けたのだ。


「ナタク・・・ホントだ、確かにナタクだ。
 そっか。ナタクって宝貝人間で、それでもって蓮の花の化身なんだっけ。神経なんかないから動けるんだわ」


「宝貝人間!?そんなヤツがいるさ!?」


天化は驚く。


「太乙さんが生み出したんだって」


この間、崑崙山に帰ったときに太乙に会って聞いた。

あのナタクという子どもは、太乙と関わりがあると教えてもらい、どういうことなのか聞きに行ったのだ。


は一人、頷いた。



「桂芳さま、ここは私にお任せを!」


メガホン宝貝を失った張桂芳の代わりに、風林が丸玉「紅珠」をナタクへと投げた。

そしてすぐに巨大化し、ナタクを飲み込んだ。


と天化は固まる。

早い。


「・・・・あっけないさ」


「何でーっ」


が、



ド ン !!



すさまじい音が紅珠の中から響き、同時に光が破裂した。

ナタクが、珠の中から攻撃をしたのだ。


「風林!!」


張桂芳が叫んだ。


まともにナタクの攻撃を受けた風林は倒れ、そして魂魄が封神台へと飛んだ。


珠を壊したナタクは外へ出、再び宙へ浮かんだ。



「敵が一人・・・減ったわ」


しかし、安心したのも束の間

今度は、ナタクが風林を封神したときの攻撃の衝撃で、城壁が崩れだしてきた。


風林が封神され、丸玉「紅珠」はそこに転がったまま。

このままでは城壁の下敷きになってしまう。


「ぎゃーっ!マジ死ぬーっ!」


太公望達の叫び声が聞こえた。


「お師匠様!!」


一目散に武吉が駆けだした。

「紅珠」を取りに行こうとしているのだ。


「あ、武吉くん!・・よっ!」


は武吉の体の回りに風の壁を巻き付けた。

これで崩れてくる瓦礫が武吉に当たることはない。


「ありがとうございますさんー!」


走りながら武吉は言った。


「へえ・・・そんなことも出来るさ」


感心したように、天化はの宝貝を見つめる。


「便利でしょ」


は笑う。




その後、武吉は無事に太公望達を助け、天化が隙をついて張桂芳を封神し、一応は一段落。




「ところで太公望・・・あなた捕まっただけで終わったよね」


「・・・う、うるさいのう、放っとけ!」



























      
































初執筆...2003,09頃
改稿...2005,04,23