怖い夢を見て夜中に目が覚めるなんて、まるで子どもみたいだとは思った。

は上半身を起こし、胸の辺りを押さえた。何度この夢を見ただろう。目を瞑りたくなるくらい眩い光と共に、女カが消えたあのときの光景。今も目に焼き付いて離れない。
女カと一緒に太公望も死んでしまった。女カと一緒に、消滅してしまったのだという。太公望のことを聞かれ、首を左右に振る黒点虎のことを、は思い出した。


言い様のない喪失感が押し寄せる。暗闇までも、虚無感を手伝うかのようにそこら中に存在していた。


頬を雫が伝った。


「……生きてるのに」


太公望は生きていた。消えてなんていなかった。もう知っているのに、どうして同じ夢を見るのだろう。楽しい夢を見せてくれたらいいのにと思った。


どうしようもない不安が襲う。もしかすると、生きていたことは、夢だったんじゃないだろうか。あの日、会いに来てくれたことは夢だったんじゃないだろうか。


はそれらを振り払うように、頭を振った。
太公望はこの世界にちゃんと今も存在している。


抱きしめてほしいと思った。


手を伸ばしても、そこには誰もいない。ぽたりと雫が落ちる。ただ、闇が広がるばかりだった。















2009,03,04