「手を繋ぐ意味って何だろう」 はぽつりと言った。 「意味って言うか、理由って言うか」 言いながら、足下の草や花から顔を上げた。葦護と目が合った。 「信頼関係の表れとか、愛情表現の一つとか言うけど、よく分かんないのよね」 手を繋ぐのは、恋人だったり、親子だったり、友達だったり、色んな場合がある。ふと思ったことだった。 「それはやっぱり、あれだろ」 考えるようにの顔を見つめていた葦護は、目深にかぶった帽子の下から言った。 「ほら、手を繋ぐことによって二人の手が触れあうだろ?その肌と肌との密着した触れ合いが」 「気持ち悪いです」 葦護がにやにやしながら言い出した言葉をは遮った。 「まぁそれは冗談だけど」 葦護は笑う。 「楽しいからだろ」 笑いながら言った。は葦護を見つめ返した。 「一人で手は繋げないからなぁ」 そして、の手を取る。帽子に隠れて見えづらい目は優しかった。繋ぐ手と同じくらいに。 戻 2007,07,29 |