「どうしたの? 女の子にでも振られたの?」


顔の上に落ちてきた影はのものだった。青空を背景に葦護を見下ろしている。


「……何? なんか用?」


寝ころんだまま聞いた。


「用があるっていうわけでもないんだけど、葦護の元気がなさそうだから。女の子に振られたの?」


青空に負けず劣らずの清々しい笑顔と声で、その口から出てくる言葉はあまり爽やかではない。なんでこいつはこう……と葦護は溜息をつきたかった。





体を起こし、来い来いとに手招きした。「なに?」とは葦護のそばに寄る。


「ちょっとそこに座んなさい」


言うと、「はい」と素直に従い、は体を葦護の方に向けて正座した。


「あのね、俺が元気ないからってそれイコール女絡みみたいな方程式作り上げるのはやめてください」


きょとんとは葦護を見つめる。葦護は溜息を吐き出した。


「いつからおまえの中でそういうイメージ固まってるのか知らんけど、俺の元気はそういうことと比例してるわけじゃないから。分かる?」


は微笑んで頷いた。


「俺にだってね、人並みに悩むことや考えることあるんだから。聞いてんのかね?ちなみに言っときますけどね、振られてないから」


「葦護」


清々しい声が割り込んだ。見ると、は笑みを浮かべたままゆるく腕を広げている。


「慰めてあげよっか」


こいつは狡いと、葦護は思う。こう言えば絶対に逃げていかないと知っているのだ。この広げられた腕の温かさと心地よさを知ってしまえば、そこから逃れる術はない。


「……ばかだよなぁ」


「誰が? 私?」


の頭の後ろに、淡い桃色をした花びらが一片付いていた。


「……俺が」


髪に引っかかっているそれを取って離すと、ひらりと風に舞って飛んでいった。











2007,03,17